コンピュータのOSとして開発されたAIに、人間の男性が恋をする──そんなストーリーの映画「her/世界でひとつの彼女」が日本で公開されたのは、2014年6月だった(米国では13年12月)。「サマンサ」というこのAIは、OSでありながら音声を通じ、感情的な受け答えができ(女優のスカーレット・ヨハンソンが声を担当)、ホアキン・フェニックス演じる主人公が次第に「彼女」に引かれていく姿が描写されている。 当時から「いずれはこんなことが実際に起きるかもしれない」と受け取られていたが、10年後のいま、それはいよいよ現実のものになろうとしている。しかし企業にとって、こうした人間の感情を把握し、模倣し、さらには操作まで可能なAIは、もろ刃の剣となりそうだ。 その一例として、米国で起きたある訴訟を紹介しよう。訴えを起こした人物は「息子が自殺したのはAIチャットbotが原因だ」と主張しているのだ。 AIチャッ