秋の官吏の昇任の決まる日であったから、 大臣も参内したので、 子息たちもそれぞれの希望があって このごろは大臣のそばを離れまいとしているのであるから 皆続いてそのあとから出て行った。 いる人数が少なくなって、 邸内が静かになったころに、 葵の君はにわかに胸がせきあげるようにして苦しみ出したのである。 御所へ迎えの使いを出す間もなく夫人の息は絶えてしまった。 左大臣も源氏もあわてて退出して来たので、 除目《じもく》の夜であったが、 この障《さわ》りで官吏の任免は決まらずに終わった形である。 若い夫人の突然の死に左大臣邸は混乱するばかりで、 夜中のことであったから叡山《えいざん》の座主《ざす》も 他の僧たちも招く間がなかった。 もう危篤な状態から脱したものとして、 だれの心にも油断のあった隙《すき》に、 死が忍び寄ったのであるから、 皆 呆然としている。 所々の慰問使が集まって来ていても、 挨