著者:オルガ・トカルチュク翻訳:小椋 彩出版社:松籟社装丁:単行本(367ページ)発売日:2019-12-01 ISBN-10:4879843830 ISBN-13:978-4879843838 断片積み重ね「宇宙」描く今年ノーベル文学賞を受賞した(実際には発表が延期された昨年の分の受賞だが)、ポーランドの作家、オルガ・トカルチュクの長編である。彼女の小説はすでに『昼の家、夜の家』『逃亡派』の二冊が翻訳されていて(どちらも小椋彩(ひかる)訳、白水社)、これが邦訳の三冊目となるが、じつはこの本が一番早く、原著は一九九六年に刊行されていた。しかし、決して古びてはおらず、むしろトカルチュクの原石といえるような魅力の詰まった作品である。 舞台となるのは南西ポーランドの、ドイツとの国境から遠くないプラヴィエクという架空の村。ちなみに「プラヴィエク」とはポーランド語で元来「太古の時代」を意味する名詞で