ほぼ30年前に幕が降りた在日朝鮮人の北朝鮮帰国事業は、日朝関係の原点だ。国連人権調査委員会がこの夏、北朝鮮の帰国事業の人権侵害を調査し、拉致事件と同様の問題があると指摘したが、日本での関心は薄い。小島晴則さん(82)は、当時、共産党で帰国事業に関わっており、新潟港から北に向かった8万8611人を見送ったという。当時の話をジャーナリストの前川惠司氏が聞いた。 * * * 小島さんは帰国する人たちの間に踏み込み、写真を撮り、話を聞いた。日雇い労働者で酒好き、40歳近くで独り身の金さんは、「北で嫁をもらえる」と期待をふくらませていた。満州(現・中国東北部)で知り合った朝鮮人妻を持つ日本人の大工、菅原さんは、少しでも早く「差別のない」妻の国に行くのだと言っていた。木村食堂の朴さんは、日本人の妻を置いて「一足先に帰国する」と宣言していた。小島さんは、自分自身が社会主義の国に帰るような気分になった
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