本書は共同研究「人間と動物の関係の多様性とその文学的表象の比較研究」の成果である。「動物のまなざしのもとで」というタイトルは、人間が動物を一方的にまなざし、その生の価値すら意味づけてきた歴史を批判するとともに、動物たちを私たちに働きかける固有のアクターとみなすことで、この世界の複数性を開示しようという本書の執筆者の共通の関心を表わしている。 第I部では、村上克尚が、息子の早逝によって、動物たちが主体としてあるアイヌ的世界観へと導かれていく母親を描いた津島佑子「真昼へ」を、中井亜佐子が、ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』の動物たちの多義的なまなざしをより強化したJ・M・クッツェー『フォー』を、呉世宗が、横滑りしていく隠喩としての鴉の視線を通じて主人公の主体を厳しく問う金石範「鴉の死」をそれぞれ分析する。 第II部では、カトリーヌ・パンゲが、1910年にトルコ政府が実行したシブリ島で
東京都立成瀬高等学校 〒194-0044 東京都町田市成瀬7-4-1 電話:042-725-1533 Copyright (C) TOKYO METROPOLITAN BOARD OF EDUCATION All rights reserved.
「100分de名著」(NHK Eテレ)で取り上げる作品を九年にわたり選び続けてきたプロデューサー、秋満吉彦さんが最も戦慄を覚えたのは、現代社会のありようを言い当てる「名著の予知能力」でした。5月31日に発売された新書『名著の予知能力』は、まったく新しい名著の読み方を提案する書。 講師が青ざめるとき――シェイクスピア「ハムレット」(2014年12月放送) 日本を代表する……いや国際的にも高い評価を受けているシェイクスピア研究の第一人者の顔が青ざめていた。モニター越しに見えた表情なので、スタジオ照明の加減もあり、やや誇張が入ってしまっているかもしれない。もっと正確にいえば、表情がこわばっていた。次の句が継げないでいる。明らかに挙動がおかしい。 東京大学大学院総合文化研究科教授・河合祥一郎さん。「ハムレットは太っていた!」「謎解き『ハムレット』」といった著作に惚れ込んだ私が、「ハムレット」解説講
なぜ、本を読むのか? Why do we need to read books なぜ、本を読むのか?本書『読書人カレッジ2022』の執筆者の一人である明石健五は、それを「考えるため」であると言います。 ある未知のものに出会ったとき、そこに驚きと感動が生まれる。そうして、初めて自分なりに思考することができ、それを人に伝えることができるようにもなる。 そういう過程を生きられる人のことを、「知性ある人」というのではないか。では、「知性」を自らのものにするためにはどうすればいいのか。繰り返しになりますが、「読み」「考え」「書く」ことを通してしか感得できないのではないか。 新しい出来事や局面に出会い、答えのない問題を考えることで鍛えられていくものが、確かにある。そういう問題は、すぐれた本の中にいくつも見つけることができます。 繰り返し考えることによって、自分の思考を鍛えていく。それによって、今の世の
『博士の愛した数式』『ミーナの行進』『ことり』など数々の名作で知られる小川洋子さんにインタビュー。新刊『不時着する流星たち』は、実在した人物や団体といったモチーフから生まれた10の物語が収録されている短編集です。タイトルの由来から、物語の創作過程、さらに、映像化についてのお話など、盛りだくさんの内容をお伺いしました。 小川洋子(おがわようこ) 1962年、岡山生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。91年、「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞。2003年刊『博士の愛した数式』がベストセラーになり、翌年、同作で読売文学賞と本屋大賞を受賞。同じ年、『ブラフマンの埋葬』が泉鏡花文学賞、06年、『ミーナの行進』が谷崎潤一郎賞、13年『ことり』が芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する。 『不時着する流星たち』小川洋子(2017年1月28日) たくらみに満ち
Silk Dress Coming, 1982 Photo: Ann Rhoney [改訳]通話 (ボラーニョ・コレクション) 作者:ロベルト ボラーニョ 白水社 Amazon
今回は「仮に~だったら」という仮定の質問なので、返答は無理かもしれない。 questions.hateblo.jp 1+1の答が急に3になった場合、世界で最も困る人は誰か。 世界で最も得をするのは誰か。 その二人は協力できないものだろうか。 どうも三ついっぺんに応えるのは難しいようなので、別々に訊いてみた。 何だか冗談の通じない人に、真面目に返答されたような虚しい感じがする。もし、人間にこんな風に返されたら「そんなにこの人は俺のことが嫌いなのか……」とすら思えてくるだろう。 もう一つ、「ざます」の問題も訊いてみる。 questions.hateblo.jp 「~ざます」という語尾は、現代の標準的な日本語ではあまり使われない敬語であり、一般的には古風な印象を与えます。そのため、一日中「~ざます」という語尾で話すとなると、多くの人がその言い回しに馴染みがなく、理解しづらいと感じる可能性がありま
Yukio Mishima, 1961 (photo by Tadahiko Hayashi) The Temple Of The Golden Pavilion (Vintage Classics) 作者:Mishima, Yukio Vintage Classics Amazon Confessions of a Mask (Penguin Modern Classics) 作者:Mishima, Yukio Penguin Classics Amazon Beautiful Star (Penguin Modern Classics) (English Edition) 作者:Mishima, Yukio Penguin Amazon
発売前から話題になっていたポプラ社の百年文庫、とうとう発売になりましたね。 ↑朝日新聞に掲載された全5段広告。背で並べてもきれいですね。 ↑内容見本(左)、注文書(右) これ、すごいなあ。まずなんといっても、内容がすばらしい。日本と海外の短篇を、和洋で分けることなく混ぜ混ぜでテーマ別に分けているところがgoodだし、名短篇を集めたといっても、必ずしも著者の代表作ではなくて、隠れた名作、他の版で手に入りにくい作が多く含まれている点も、よくある名作集的なアンソロジーには食傷気味の、うるさ型の本好きの心をもがっちりとらえそう。 装丁もいいよね。シンプルなカバーもいいし、カバーをとると本体に安井寿磨子氏による木版画が出てくるのもいい。本文組は上品で読みやすいし、スピン(しおりひも)の色を各巻変えているあたりの、こまかいこだわりもいいぞ。 とてもすてきなシリーズだと思う。いいなあ、ほしいなあ、気にな
音楽について文章を書くのは難しいし、野暮ったいし、読むのも面倒、なぜなら音楽そのものを聴いている方が何十倍も何百倍も有意義な時間になるから。 というのが音楽関係の本について、常に伴うジレンマではないかと思う。しかしもちろん、読んで面白くて有益で、人に勧めたくなる本も少数ながらある。 『YMOのONGAKU』、早くも3刷決定!https://t.co/i6gpaasqJm https://t.co/i6gpaasqJm — アルテスパブリッシング (@artespublishing) 2019年4月2日 発売前にもう増刷が決定していたという本書は、YMOを知っている世代にも知らない世代にも全力でお勧めしたいほどスリリングで、魅力を語りつくせないほど奥深い良書だった。 祝YMO結成40周年! レコーディング・スタッフとして『散開』までを見届けた著者が、 豪華ゲストとともに解き明かすテクノ・ポッ
「またかよ」と言いたくなるほど、頻繁にビジネス書で引用されるこの言葉……。 ダーウィンは「変化に最も対応できる生き物が生き残る」と言ったか? http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2001/0927syosin.html 正直に言ってもうウンザリで、目にするのも嫌だが今月だけで二回も目撃した。 どうも日本で急速に広まったのは、小泉首相の所信表明演説が切っ掛けらしい。 この言葉がやけに目に障るのは、適応云々とか変化を促すとかいうより、 「つべこべ言わずに、こっちの都合のいいように動いてくれよ」 「俺様の言いなりになればいいんだよ」 という本音を糊塗するために使われているケースが多いからではないだろうか。 でもって、何だか胡散臭くて不愉快だなと思っていたら、実はダーウィンではない人の言葉らしい、という指摘が「文系が20年後も生き残るためにいますべきこ
『一発屋芸人列伝』。「雑誌ジャーナリズム賞」の受賞作であり、一発屋芸人にインタビューを重ねたこの本を貫くのは著者の強烈な「義侠心」である。辞書的に言えば「正義のために弱い者を助けようとする心」(日本国語大辞典)にあふれている。 著者、「髭男爵」山田ルイ53世は「ルネッサーンス!」で一世を風靡した一発屋芸人である。彼の義侠心はどこに向かうのか。 それは一瞬で消費され、世間を笑わせるのではなく、世間から笑われる対象になってしまった同じ「一発屋芸人」だ。より正確には、一発屋の生き方であり、芸の技術を世間の嘲笑や蔑みから助けだそうと試みている。 一発屋についてまわるのは「どうせ……」という言葉だ。「どうせ、芸も考えも浅はか」「どうせ今も大したことをしていないんでしょ」に抗いながら、山田ルイ53世は読者に問う。 一発屋を弱い者と扱い、「どうせ……」で切り捨てていいのか?と……。 (取材・文:石戸諭/
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