「私」と「僕」と「俺」。日本の男は、3つの一人称を持っている。自らの立場や接する相手によって、複数の自分を使い分けながら生きている。 そのなかでも、「僕」はもっとも中途半端な男の姿だ。「俺」のようなワイルドさもなければ、「私」のような品位もない。「俺」でも「私」でもない、ただただ「僕」でしかない「僕」。そんな一人称が表題の本作には、「俺」と名乗るには小心者で、「私」と名乗るにはまだ若い、17歳の「僕」がいる──。(『週刊SPA!』2000年4月書評:山本康人『僕』最新刊2巻/小学館/2000.2〜/ISBN:4091855814) これは、僕が5年前に書いた文章だ。 たまたま『僕』というマンガについて書く必要があったからこの書き出しを考えたのだけど、後々考えるとこれはちょっと面白いなぁと思う。 たとえば、僕はこのブログで「僕」という一人称でテキストを書いている。だけれど、日常生活でこの「僕