東京・浅草で74年前から営業を続けるパン屋がある。「ペリカン」。おもな商品は、食パンとロールパンだけ。消費者の嗜好が細分化し、多くの人に愛されるためにはどの業界でも多品種少量生産が“常識”になりつつある中、極めて珍しいと言われるビジネスモデルを貫く。息長く愛されてきたパン屋はこの秋、ドキュメンタリー映画になった。 「普通。でも、ないと困る」 浅草寺の門前町の喧騒から少し離れた田原町。国際通りの道路脇に、店と工場を兼ねる建物がある。店内の木製の棚には、伝票が貼り付けられた食パンとロールパンが並んでいる。季節や天気でばらつきはあるが、1日に食パン400〜500本、ロールパン4000個ほどを販売している。全体の3割ほどは喫茶店やレストラン、個人商店向けの卸売りだ。パン屋が忙しいとされる春と秋には、予約分だけで完売することも多い。 公開を控えた映画『74歳のペリカンはパンを売る。』に、印象的な場面