優勝セレモニーの間も、ロナウドの目はずっと潤んでいた。この泣き虫のエースに優勝を、とチーム全員が願っていたのだ。 涙に濡れるスーパースターを一羽の蝶が慰める。 12年前の母国開催での決勝に敗れて悔し泣きしたクリスティアーノ・ロナウドは、EURO2016のファイナルの前に「(今回は優勝して)嬉し泣きしたい」と語っていたが、前半にディミトリ・パイエの激しいチャージを受けて負傷してしまう。 続行が不可能と悟ったポルトガルの背番号7の頬には、種類こそ違えど、またしても無念に起因する涙が流れ、ピッチに舞い込んだ小さな蝶は不運な英雄の心中を察するように、その甘い目許に寄り添った。そして、汗まみれの顔でさえ何かを惹きつける男には、勝利の女神もそっぽを向くことはできなかった。 7月10日のサンドニの夜、ロナウドは喜怒哀楽のすべてを味わったことだろう。EURO2004の雪辱を果たす機会が訪れたことに喜びを感