「来て、くれたんだね」 引っ越してきたばかりの部屋。開けてもいない段ボール箱が壁際に並べられただけの無機質な光景のなかで、ありがみんの目に映るのはめいぼうじんだけだった。 「もっと早く来てくれると、思ってた」 「ごめん」 優しい目でありがみんを見やっためいぼうじんは、がさごそとコンビニの袋をひろげる。 「プリン……食べれるかな」 心なしか頬や額を赤く染めたありがみんが答える。 「うん、大丈夫だと思う」 気だるげに上半身をもちあげ、プリンを受け取るありがみん。その肩に、そっとカーディガンをかけてやるめいぼうじん。 「けっこう熱出てないか?」 めいぼうじんの問いに、スプーンをくわえながらありがみんが答える。 「熱は計ってない……。荷物のどこに体温計があるかわからないし……」 「おでこ、いいかな……」 控えめな声とともに、ありがみんの前髪を持ち上げるめいぼうじん。 「めいぼうじん、近いよ……」