一般に脂質、あるいは油脂分は、特定の「味覚」をもたらすものとしては認識されていません。ただし中華料理などでは、油が「料理にコクを与えるもの」として用いられることがありますし、生クリームやバターなどの乳脂肪分にもコクの要素を見いだすことが可能です。コーヒーについても油脂分がコクの元になるものであるとともに、香り成分を溶かし込んで口腔内にとどめる役割を果たしており、風味全体に影響するものだと考えられています23。 また一方、食品中に含まれている脂質には、脳にある種の「快楽」をもたらす作用があるという説も提唱されています24。これはポテトチップスやフライドチキンのような、いわゆる「ジャンクフード」が好まれ、またヒトによっては「習慣性」に近いような作用があることと結びつけて考えられています。もともと、脂質は生物にとって、栄養学的に見た場合、単位あたりのカロリー(エネルギー)が糖質やタンパク質より高