「雨の日も、風の日も、雪の日も、ずっとここでこうやって焼いているんです。ブワァと雪が舞っている日も、変わらずにやっています」 京都市北区紫野にある今宮神社。その脇の参道にあるあぶり餅屋「一文字和助(いちもんじわすけ)」こと「一和(いちわ)」の創業は、長保2年(西暦1000年)。平安時代から続く日本最古の和菓子を、昔と変わらぬ製法で作り続けている老舗中の老舗だ。世界最古となる金剛組同様、日本に7社ある創業1000年を超える会社のうちのひとつである。 ▲「一和」25代目女将の長谷川奈生さん 平安時代、一条天皇が国内で流行り病を鎮めようと今宮神社を建立したのと同時期に、「一和」の先祖は移り住んだと言い伝えられており、ここで提供されるあぶり餅は、無病息災を願う縁起物の和菓子として知られてきた。 店頭で焼かれる餅は、「家を守る」という古来の風習から、すべて女性の手によって作られている。つきたてのやわ