高村圭吾は朝一番のメールチェックをしていて、気がついた。そういえば今日はボーナスだ――。 数年前から、丸定商事の給与や賞与の明細は電子メールで届く。パスワードを入力して、PDFファイルを開く。味気ない。ファイルの中身を見た瞬間、思わずため息が漏れた。 ああ、こんなに下がった――。 高村は、4月の為田課長との面談を思い出した。また少し腹がたってきた。 2010年4月23日14時45分。 丸定商事・営業3課、会議室――。 「どうして、私の評価が下がっちゃうんですか?」 高村は、この半年は営業として十分な成果を挙げた、と自分では思っていた。若干ではあるが期初の目標には届かなかった。全社的にも目標は未達成だったわけだし、周囲を見渡せばむしろ成績はいいほうだった。SAやAとは言わないが、現状維持のBは堅いだろう、と思っていた。ところが、このダメおやじは「高村君の人事評価はBからCに下がった」と言い出