東京など遠方へ行く時には、必ず荷物に丸い木筒入りの黒七味を詰める。詰め替え用パックとセットにしても100㌘に満たないお土産。親しい人へのお土産物は大げさでない方がいい。カバンからさっと出して渡す方が受け取る側も気が楽なのではないか。 黒七味との出会いは、たまたま出かけたそば屋で。テーブルに備えてあった七味を振りかけて、その香りの複雑さに驚いた。舌に突き刺さるような唐辛子の刺激を感じたかと思うと、すぐにのどから鼻腔(こう)へ山椒のさわやかな香りが立ち上る。その場で製造元の名前を確かめ、以来、マヨネーズに混ぜたり、焼いたもちを食べる時のだし汁に入れたりして味の変化を楽しんでいる。「ほんの少しかけるだけで味に深みが出る。小さくても満足してもらえるところが気に入ってます」。 「黒七味」の原料は唐辛子と山椒粉、白ごま、黒ごま、けしの実、麻の実、青のり。これらを炒(い)った後、手でもみ込んで香りを引き