序 きっかけは大学に掲示された研修生募集の張り紙である。大学で農業政策や歴史について学んでいた私は、小国でありながら強力な農業を持つオランダに漠然とした興味を抱いていた。また卒業後新規就農を目指すという道も考えていたため、オランダで世界最先端の温室農業を学んでおくことは将来きっと役に立つだろうという観測もあった。 通常であれば農業生産額は土地の面積に大きく影響される。ところがオランダは九州ほどの面積でありながら農業輸出額でアメリカに次いで世界第二位である。フランスやブラジル、オーストラリアといったような農業国を凌いでいるのである。 日本の国土面積は比較的広いが、耕地面積は諸外国に比してそれほど多いわけではない。そして日本の農業は土地や労賃といった経費の高さから安価な外国産農産物に押され、さらにWTO交渉で市場開放圧力を受けて苦境に立たされている。日本と同じように耕地面積が少なく物価の高い国