多くの人がニューヨークやパリ、ロンドンには「観光目線」ででかけるだろう。そこではホテルの廊下や下町の路地でさえもキラキラと輝き、ひとときの非日常に酔える。しかしもし、長期間を仕事で滞在すると、その場所もルーティンな風景に見えてくるかもしれない。さらに、思わぬ疑いをかけられたとしたら? 輝く街が一変して、グルーミーな街になってしまうだろう。 この『ハドソン川の奇跡』は、ニューヨークを見る目を一変させてしまう。主人公・サリー機長の目線で阿鼻叫喚の事故の当事者となり、英雄になったかと思えば、あっという間に驚くような理由で、糾弾されうる立場となってしまう。その悪夢のトンネルのような世界が容赦なく描かれ、その精神世界の中で、見たこともない肌寒さが漂うニューヨークの街をさまようことになる。 これは2009年1月に米ニューヨークのハドソン川で実際に起こった物語だ。飛行機事故で、制御不能になった旅客機は、