一線を越えた歴史キャンペーン いったい、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の中はどうなっているんだ――。果敢に反トランプ論陣を張る進歩派新聞の内部の混乱に、よその国の新聞ながら心配を禁じ得ない。 原因は同紙が昨年試みた「1619プロジェクト」と呼ばれる米国史の「読み替え」特集だ。プロジェクトの動機はおそらくトランプ現象への反発だったろう。しかし、いかに米国の知性のもっとも高い一角を占める報道機関といえども、則を越えたように思える。 「1619プロジェクト」は、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動の大躍進を思想的に後押しし、今年の米大統領選に大きな影響を与えてきた。BLM運動は時に右派から「1619暴動」とも呼ばれる。 そのプロジェクトが結局、トランプ大統領による反撃だけでなく、右翼過激派の増長を招き、結果的に数多くの暴力沙汰まで起きている。目前に迫った投票日とそれ以降に、大躍進したB