子どもの頃からずっと東京に住み、 社会人になってからは、都心で働いていた。 一人暮らしは駅の真上のマンションだったから、 あの頃は、ネオンきらびやかな夜の都会が、 自分の生活において、とても身近にあった。 そして、子どもは嫌いだった。 結婚をして、マンションを買い、 そして子どもが産まれて、 一戸建てに買い替えた。 ビルが立ち並ぶ都内からはすっかり離れ、 駅からも遠く離れた場所に、今は住んでいる。 都会のネオンは、はるか遠くになってしまった。 でも。 あんなに好きだった東京が恋しくなくなったり、 好きではなかった子どもが好きになったり、 この10年で自分は、ずいぶん変わったと思う。 そのことを、改めて感じさせてくれたのが、 息子が通っている、そろばん塾の光景だった。 街灯の少ない閑静な住宅街に、 ポツンと佇む、プレハブの小さな塾。 還暦を超えているであろうご夫婦が 2人で営んでいるその塾に