<政治が破綻し、閉塞状況を生きる人間たちのドラマ『ガザの美容室』。「パレスチナ問題のいま」ではなく「パレスチナ人のいま」から、日本人に見えてくるものもあるはずだ> 「ガザ」と言えば、いま最もまがまがしい響きを持つ地名だろう。5月にイスラエルの米国大使館がエルサレムに移転した時、パレスチナ自治区ガザでパレスチナ人の大規模な抗議デモが起こり、イスラエル軍の銃撃で60人以上が死んだ。 「ガザ」では、イスラム組織ハマスの支配が始まった2007年以降、イスラエルによる封鎖が続き、08年、12年、14年と3回にわたってイスラエル軍による大規模な攻撃を受けた。 ガザは地中海に張り付いた絆創膏のような場所で、海岸の長さ40キロ、幅は6キロから12キロ。北と東はイスラエル側でコンクリートの壁で仕切られ、南はエジプトとの国境で遮られている。海も海岸から10キロほどのところでイスラエル軍に封鎖されている。まさに