記念日なので、彼は特別なレストランを予約した。 店の名は『レプリカーレ』といい、「三ツ星クラスの完全コピー料理」で評判のレストランだ。 「嬉しい。前に私が行きたがっていたのを覚えていてくれたのね」 ドレスアップした彼女が、瞳を輝かせて彼に笑いかける。 「うん、あの頃はまったく予約が取れなかったけれど、ようやくブームも落ち着いてきたみたいだね。それにしても、すごく高級感があふれているのに、お店の人に威圧感がなくてほっとしたよ」 「そうよね。お料理はレプリカでも、インテリアとサービスは本物っていうのが、このお店の売りだから。一流のサービスは、お客に居心地の悪さを感じさせないんですって」 小声で話していると、サービス係りのギャルソンがメニューを持ってきた。 熟慮の末、彼女が選んだのは「瀬戸内オーベルジュのディナーコース」だった。彼も同じものを注文する。 「僕にはよくわからないんだけど、レプリカ料