一般に中南米作家の精神の底を流れているものは、第二次大戦直前の革命と反革命という大きな揺らぎのなかをくぐり抜け、第二次大戦後になってそれを芽吹かせた歴史感覚ではないかと思う。マルケスの場合も同じです。こういう時代背景を抜きにして、単に中南米という一つの地域の文化として考えたのでは分らない。マルケスをとらえるときには、国際的な視点というものが重要なんです。それはマルケスの作品が世界中に翻訳されているとか、コロンビア大学で名誉博士になったとかいうことで国際的なんじゃない。ひとえにローカルな視点を越えたという意味で国際的なんです。『百年の孤独』という作品はとにかく驚くべき作品です。背景とか登場人物の風習、習慣、そういうものはたしかに中南米的かもしれない。日本人なんかとは違ってあくが強いし、食ってるものだって、恐らくそれ食ったら三日ぐらいは体臭が抜けないだろうというようなものばかりだ。しかしそれに