文:篠藤ゆり、写真:松嶋愛 倉数茂(くらかず・しげる) 1969年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門は日本近代文学。2005年より5年間、中国大陸の大学で日本語を学ぶ学生を対象に日本文学を教える。帰国後の2011年、訪れた田舎町で殺人事件に出会う少年たちを描いたジュブナイル小説『黒揚羽の夏』(ポプラ社)でデビュー。今回が4作目となる。 ――〝著者〟の私と、私の友人で三十代の作家・澤田瞬、その伯母である老小説家の沢渡晶。作中、三人の作家の作品が入れ子となり、全体として壮大な大伽藍のような作品となっています。かなり複雑で、まるで迷宮のような作品ですが、最初から全体の構造を構想して書き始めたのでしょうか。 実はいくつかの短編を書いて編集者に見せたところ、すごく面白いけれど、短編を並べるだけではなく何かそこに大きな枠を作ってみたらどうか、という意見をいただいて。いろいろ考えるう