幻想と現実の入り混じった世界や社会問題を鋭い筆致で描きつづけている作家、星野智幸さん。大江健三郎賞を受賞した『俺俺』が2013年に映画化されたことも記憶に新しいですが、小説の世界だけではなく、時事短評やエッセイなどでも幅広く活躍されています。 そんな星野さんの初エッセイ集『未来の記憶は蘭のなかで作られる』が、2014年末に刊行されました。1997年にデビューをされてからの17年間に書かれた、身辺雑記、社会時評的な思索、旅の記憶、文学についてからサッカーのことまで。過去にさかのぼるように並べられたエッセイたちは、ときに胸をえぐり、揺さぶり、輝かせ、彩りを与えてくれます。 そしてとにかく美しい文章と丁寧な言葉たちは、素晴らしいのひと言に尽きます。ふだん生きているなかで、気づかなかったこと、見ないふりをしていたこと、思い至らなかったたくさんのこと。そんな端々に思いを巡らせる、一人ひとりにとって、