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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (16)

  • 日本はどれほど「アジア」を知っているのか?

    南海沖で起きた、ベトナムと中国の衝突が日で高い関心を引いている。メディアの報道ぶりも日と直接関係のない事例としては珍しいほど力が入っている。日頃のアジアニュースへの冷たさと比べると、その報道の視点は「南海における緊張の高まり」に関心を払っているというよりも「中国の横暴ぶり」に焦点を置いたものが多い。そうでないというのなら、もっと日頃からフィリピンと中国、あるいはその他の国々との往来にも関心が持たれても良いはずだ。が、ここまで毎日のように熱心に報道枠をアジアニュースに割いてきたメディアはこれまであまりなかった。これは今後アジアニュースへの比重がもっと高まる前触れとみて良いのだろうか? だが、当に「中国の横暴ぶり」をメディアが伝えているか、といえば、そうでもない。横暴ぶりならば、今新疆ウイグル自治区で起こっているウイグル系住民への激しい取り締まりや弾圧、そして天安門事件25周年を前に激し

  • 中国的歴史認識とポピュリズム

    マレーシア航空機が見つからないままもう1ヶ月半あまりが経った。先週、『ニューヨーク・タイムズ』などをはじめとする欧米メディアから次々と、「中国当局は『破片らしきものが見つかった』だの『遭難機のシグナルを拾った』だのという情報を流したが、どれも根拠の無いもので結局現場を混乱させただけ」という手厳しい報道が流れた。マレーシア機乗客の3分の2を自国民が占めている中国は、なにか先手を打たなければと懸命のようだが、中国捜索船に乗船取材していた、国有通信社の新華社記者が「インド洋で飛行機から発信されている信号を受信!」と真っ先に報道して、今度は「情報をまず報道よりも先に共有する」という共同捜索チームのルールを破ったと叩かれた。 中国はとにかくこれまで捜索でなんの点数も稼げておらず、完全に欧米諸国に遅れを取っており、なんらかの手柄をアピールしたいと焦りがある。「同じ船にうちの記者も乗っていた。だが軍関係

  • グレーゾーンvsグレーゾーン:それがこの国?

    2月の「人々はスマホに自分の運命を賭け始めた?」でわたしが興奮丸出しでご紹介した、「アリババ vs テンセント」という2大ネット企業のオンライン支払いサービス合戦は、あれからまだ1ヶ月あまりしか経っていないのに、さらにまた別の局面に入った。 一応報告しておく。前回の記事では「阿里巴巴 Alibaba」(以下、アリババ)が展開する財テクサービス(「余額宝」)を「サービス開始からわずか7ヶ月余りで4900万ユーザー、2500億元(約4兆2千億円)を集めた」という1月時の統計でご紹介したが、3月中旬に明らかになったところによると、余額宝の規模はすでに「ユーザー数8100万人、調達額は5400億元超(約9兆円)」に達したという。お陰でこの余額宝の財テクサービスを一手に引き受けている天弘基金管理有限公司は、あっという間に中国の業界トップに躍り出たそうだ。 これを「恐るべし、中国のバブル」と形容する人

  • 人々はスマホに自分の運命を賭け始めた?

    今この瞬間、中国で暮らしているわけではない人に、中国の生活においてスマートフォンがどれだけ重要であるかを言葉で説明して理解してもらうのは難しいかもしれない。 もちろん、「日だってスマホなんてとっくに普及しているし、必需品になっている人は多いよ!」と思うだろう。でも、日で暮らしているわけではないわたしが言ってもこれまた理解してもらえないだろうが、北京や上海で暮らす人のスマホ依存率はたぶん、東京を超えている。 わたしも昨年の旧正月前に初めてのスマホを買ってから、ニュースや知り合いのジャーナリストが推薦する情報などをスマホで受信するようになって、原稿テーマの情報源はスマホからが5割、ツイッターやフェイスブックなどSNSが3割、購読しているメディアのニュースレターが2割になっている。ツイッターとスマホが別なのは、中国ではツイッターへのアクセスがブロックされるためにその利用に「壁越え」用ソフトが

  • 東莞、東莞

    中国のお騒がせ国有テレビ局、中央電視台がまた「大地震」を引き起こした。ネットがえらい騒ぎになっている。中央電視台といえば、昨年の春のアップルのメンテナンス契約問題、夏には著名微博ユーザーの「売春」逮捕と「自供」、秋のスターバックス「価格差別」叩きをそれぞれぶちあげ、こうやって書きだすとほぼ季節の風物詩化していることに気づく。そして今度は春節明けに、またやってくれたという感じだ。 騒ぎのきっかけは今月9日、日曜日の午前に流れたニュースだった。華南の広東省にある都市、東莞市でさまざまなホテルや風俗店の様子をカメラで隠し撮りしたものが次から次へと流れ、「今日は普通なら陽の光を見ることが出来ない非合法の行為に焦点を当てましょう。それは売春、買春です」とやったのである。 もちろん、中国では買春も売春も違法である。10年ほど前に日から社員旅行で東莞の隣町、珠海を訪れた日人観光客グループが買春で摘発

  • 社員旅行で眺めた日本

    5月中旬、友人から携帯にメッセージが届いた。「日では日酒と、冷たいビールと、冷たい牛乳と、冷たいジュースと、冷たい水道水をそのまま飲んでも、わたしのお腹はなんともない! まだまだべたい飲みたいと思うくらい。中国ならそんなことをしたら1日もしないうちにバッタリだわ。ここは当に素晴らしい国!」 中国IT関連企業に勤めるチャンさんは、社員旅行で初めての日滞在中だった。毎日のように彼女から届く写真とメッセージを見て、6日間の滞在を終えて帰国したチャンさんにお願いして仲の良い同僚のシュウさん、モンさん、ビンさんに集まってもらった。チャンさんが得意げに温泉地から送ってきた写真に浴衣と丹前を上手に着こなして仲良く写っていた男性3人組だ。 残業で遅くなる、というビンさんを待たずに、4人で鍋を囲みながらおしゃべりが始まった。 ――旅行に参加したのは何人くらい? シュウ:うちの社員は20人、あと旅

    boonies
    boonies 2013/10/03
  • 1年後の北京。人気は和食にラーメン、そして「半沢直樹」

    昨年9月に中国で起こった、激しい反日デモから1年余りが経った。わたしも中国大陸の先っちょにある香港での暮らしを入れればすでに大陸生活も20年を軽く超えたわけだが、確かにあそこまで大規模な「うねり」を感じたことはこれまでなかった。だが、そこから1年、北京のような都会ではすっかりあの「うねり」などどこ吹く風といったように街は姿を変えている。 ちょっと最近、数軒の日料理店に行くチャンスが続いたのだが、そこで見た光景はあの激しいデモと、その後デモには参加していなかった人たちにも「感染」した重苦しい空気とはまったく相容れないものだった。 店内の8割以上が中国人のグループで、みな手慣れた様子で和をつついている。さらに日人オーナーが醸しだすお店の雰囲気をみなが十分に楽しんでいる。以前のように周りが眉をしかめそうな、中国レストランでありがちなふるまいではなく、みながその店のルールと雰囲気に従って味わ

  • 鳥インフルエンザ騒ぎに見る「知識不在社会」

    まったく......一難去ってまた一難、とはこのことですね。 去年の秋からにわかに北京の空を「彩った」PM2.5。そのまま映画「バットマン」の撮影もできそうな、くら〜く立ち込めた灰色のスモッグが続いた冬がやっと過ぎ去ったと思ったら、今度は上海の上流から大量のブタの死骸がどんぶらこ、と流れてくるホラーまがいの話。日頃はその河で魚を捕っている人たちがサルベージ業者に急遽転身(だって魚は捕れないし)、結果すくい上げたその数なんと1万6千頭とか。 「中国は人口が多いから」というのが中国人が物事をあきらめるときの決まり文句だが、多いのは人口だけじゃなかった! 原因は上流の養豚地区で疫病が流行ったから、とか、「これまでブタの死骸を引き取っていた業者が大規模逮捕されたため」とか、さらには「その業者が死んだブタを肉として売っていた(から摘発された)」とか、「病死したブタが河に流されたんだから、水質はどう

  • アップルの「旨み」

    「神経病!」(キチガイだ!) 周囲の人たちはみんな一言、吐き捨てるようにこう言って顔をしかめた。わたしの知っている限り、彼らの半数以上はアップルのiPhoneiPadのユーザーだ。もちろん、自宅や職場で使うコンピュータがマックだったり、スマホもタブレットも全部アップル製品で統一している人もいる。 だが、顔をしかめたのはそうした「果粉」(「アップルファン」の意。アップル「蘋果」とファン「粉絲」を掛けあわせた造語)だけではない。アンドロイドやウィンドウズPCにこだわりを持っている人たちですら、今のこの騒ぎになんともいえない気分を抱いている。中国でスマホやタブレットを使う人でここ1週間、この騒ぎを話題にしたことがない人はいないはずだ。 「この騒ぎ」とは、前回拙稿「権利とメディア」で触れた「315晩会」以降、激しさを増す「アップル叩き」だ。 3月15日の「世界消費者権利デー」に国営全国テレビ放送

  • ボストンから四川へ~ニュースでつながる世界

    まったく今週は慌ただしい1週間だ(そしてこれを書いている時点ではまだ終わってない)。 ボストンで現地時間の月曜日に起こったマラソン大会での爆破事件中国では火曜日の朝に目覚めて知った人がほとんどだったが、マラソンに興味もなく、はたまたボストン・マラソンなる行事があることを必ずしも知らない人たちも、インターネットにアップされた爆発の瞬間を捉えたビデオを追いかけた。その結果... 国産マイクロブログの微博などで喝采を叫んだ人がいたという。わたしはその書込みを直接目にしていないが、それを目にしたらしい人たちが憤っていた。だが、この国にそんな人たちがいることは、ある意味不思議でもなんでもない。 わたしは2001年の9.11を北京で経験した。事件の衝撃もさることながら、その翌日、通りかかったあるデパートのテレビ売り場で、飛行機が突っ込む瞬間が何度も映しだされており、そのたびに笑い声と拍手が上がってい

  • たかが粉ミルク、されど粉ミルク

    3月1日から香港で施行された条例が、中国で大きな論争を引き起こしている。いや、正確に言えば論争はほぼ「香港vs中国」状態に近く、このまま民間感情がヒートアップすれば、経済的な資源を大きく中国に頼っている香港に大きなダメージをもたらしかねない、とわたしは懸念している。 これは正確には既存の「進出口(一般)条例」の2013年版が改正されたものだ。これまでなかった「許可証を持つ者を除き、粉ミルクの輸出を禁ずる。年齢16歳あるいはそれ以上の人物が、24時間以内に1.8キロ、即ち二缶を超える粉ミルクを香港外へ持ち出してはならない」という条項が加えられ、実際に施行初日の1日には香港から中国へ向かう税関で香港人8人を含む10数人がこれに違反したとして拘束され、粉ミルク50缶あまりが押収された。中には一人で15缶を持ちだそうとした人もいたという。 だが、なぜ「粉ミルク」なのか? それも酪農国でもない香港が

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    boonies 2013/03/11
  • 老朽都市、北京

    今年5月に新しい家に引っ越した。最近雨後の竹の子のように建っているきれいで便利なマンションや外国人が密集する地区を避けて、街中の主要路に近い、1980年代に建てられたというアパートの4階に部屋を見つけた。 北京ではよく見かけるタイプの、エレベーターなしの6階建て民間住宅。もとは国家機関の職員アパートとして建てられたというから、80年代としてはそれなりに「高級」だったはずだ。だが夜に帰宅すれば、階段は真っ暗でわたしの足音に反応して階ごとに電燈がつく、という仕組みになっている。エネルギー不足を恐れる中国の典型的な「節電」設計で、民間アパートでは普通のことだ。 引っ越して2日目には回していた洗濯機のホースが気づかないうちに排水溝からはずれ、洗濯の排水が玄関ドアの隙間から踊り場に流れ出て、そこから踊り場に開けられた穴を通って階下へ伸びるコードを伝って電気メーターの中に入り、階下の家を停電させてしま

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    boonies 2012/07/31
    雨が降ると停電したりネットが使えなくなるのはこんな理由か…表面工夫ばっかりじゃ、結局は機能しないんだよね。
  • 習近平とジェレミー・リン

    米誌「タイム」が「世界に影響を与える100人」の最新リストを発表した。それをざっと眺めて、わたしが個人的に感じたのが、1)日人が一人も選ばれなかった、2)金正恩が!、3)習近平や汪洋ら中国の新世代指導者も、4)そしてなんとジェレミー・リンが入選!!だった。 1)は「来る時が来たな」という感じ。日人としてこんな感想はよろしくないのかもと思いつつ、世界における日の存在感の急激な減少と、それに対して危機感も緊張感もない国内を眺めていると予想された範囲である。申し訳ないが、海外におけるかつての日へのあこがれや吸引力といったものは激減しており、今かろうじて残っているようにみえるそれは「過去の遺物」でしかない。昨年の100人に入った日人もいわゆる「フクシマ」(外国人から見た、という意味で敢えてカタカナにする)がらみの日人だった。あのような大地震や事故、あるいは事件でも起こらない限り、今の日

    習近平とジェレミー・リン
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    boonies 2012/04/23
  • 「日本よ、がんばれ!」@香港

    香港で入った書店で、「日・再出発」というタイトルのが目に入った。カバーに使われている写真はあの「希望の松」だ。小さな「頑張ろう!日!」と日語で書かれた赤いステッカーが貼り付けられていた。手に取ると、副題に「日で暮らす香港人22人の地震後の想い」とある...ぱらぱらと開いて、ふと思った。ほかの国でもこんなが出ているのだろうか? 我々は日で震災後海外における「風評」ばかりを気にしてきたが、こんなふうに日で暮らす人々が自分の震災経験を自国の人に伝えようとしていることに我々は気づいているだろうか? 「日人はどうしてこんなに前向きになれるんだろうと、なんども考えた。災難に慣れているから? 周囲のことなんて気にしてないから? どちらかというと、わたしはこう感じている。ここが彼らの家だから、ここを離れるなんて考える必要のない問題だから。SARSの(感染地域に指定された)期間中、わたしも

    「日本よ、がんばれ!」@香港
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    boonies 2012/01/26
  • 香港のモブ活動に思うこと

    8日の日曜日、香港九龍の繁華街、広東ロードにある有名ブランド店「ドルチェ&ガッバーナ」(以下、「D&G」)前に数千人の香港市民が集まり、大騒ぎになった。 直接の起因は、先月「D&G」の前で写真を撮ろうとカメラを構えた人を店員が出てきてさえぎったことだった。九龍半島の繁華街尖沙咀、そこを南北に走る広東ロードの南端から約500メートルほどのところに、20年以上も前から中・高級ブランドが入るショッピングモールが道路に沿って伸びている。特に歩道わきの路面店は「D&G」のほかに「フェラガモ」「プラダ」などが並び、それぞれがブランドイメージをたっぷりと漂わせ、趣向を凝らした店構えだ。 香港は観光都市だから、どこでも誰でもいつもカメラを提げてシャッターチャンスを狙っている。さらに昨今はカメラ機能を持った携帯電話はほぼ常識だ。観光客だけでなく香港人だってそこがプライベートな場所でさえなければ、誰もが目にし

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    boonies 2012/01/10
  • スティーブ・ジョブズの「生涯で最高の出来事」

    アップルの会長、スティーブ・ジョブズが死去した。今さら彼についての説明は不要だろうが、日のビジネスマンにとって切実な問題は、どうしたら彼のようなイノベーターが生まれるのかということだろう。短い答は、それは不可能だということだ。モーツァルトのまねをしようとしても不可能なように、ジョブズのような天才を他の人がまねることはできない。 しかしアップルの奇蹟は、彼ひとりでできたわけではなく、いろいろな偶然が重なってできたものだ。ジョブズは1977年にアップルを創業したが、1985年にはアップルを追放され、1997年に経営陣に復帰した。いったん会社を追放された経営者が、もとの会社に戻って実権を握るということは、普通はありえない。それが可能になったのは彼が偉大だったからではなく、アップルの経営が悪化して経営を引き受ける人がいなかったからだ。 アップルは、ジョブズを追放してからも内紛が絶えず、経営者が交

    スティーブ・ジョブズの「生涯で最高の出来事」
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    boonies 2012/01/01
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