2013.04.08 文春写真館 文学者になるはずだった? 芸能界一の読書家 児玉清 文・写真: 「文藝春秋」写真資料部 芸能界随一の読書家であり、書評家としても評価の高かった児玉清は、本来は俳優ではなく文学者になるはずの人だった。 昭和九年(一九三四年)、東京生まれ。学習院大学文学部ドイツ文学科に入学後、演劇部に籍を置くが、最初は大道具係だった。それを上背があるからと強引に舞台に立たせたのは、一年先輩の篠沢秀夫(のちの仏文学科教授)であったという。 卒業後は大学院に進むつもりが、卒業時に母が急死したことで、急遽就職先を探すことに。そして合格したのが「東宝ニューフェイス」であった。 しばらくは端役が続いた。昭和三十六年、黒澤明監督「悪い奴ほどよく眠る」に出演した際は、とにかく目立とうと大袈裟な演技を繰り返し、監督に激怒される。児玉も監督を殴りに行こうと思った程だったというが、のちに黒澤が「