コラムニストの天野祐吉氏が、最近よく耳にするのが「三丁目の夕日症候群」という言葉である。つまり、昭和を懐かしむ風潮など無意味だという批判だ。しかし天野氏は、「昭和ブーム」は単なる懐古趣味ではないと反論する。 * * * 昭和8年生まれの私は約62年間続いた“昭和”を生きた人間の一人です。振り返ると、日本が一番豊かだったのは昭和30年代前半の頃だという気がしています。それ以前の昭和は、戦争と戦後の混乱による“血まみれの昭和”だったといえる。そんな時代が終わり、ようやく人間らしい暮らしに戻ることができたのがこの時期でした。 もちろん誰もが貧しかった。ただ、貧しいながらも当時の日本人は、映画『三丁目の夕日』で描かれたように人間同士の信頼感や助け合いの気持ち、日本人の美風を持っていた。軍隊を持たないという世界でも稀有な国として歩んでいく新しい時代に向かって、誰もが希望に燃えていました。 日本人が変