「961プロダクション」の社長である黒井崇男は、「765プロダクション」の社長である高木順一朗に「負けを認めたわけではない」と吐き捨てて去っていく。これが単なる遠吠えではないとすれば、いったい物語終盤のどこに彼の勝機があったのだろうか? TVアニメ『アイドルマスター』(原作:バンダイナムコゲームス)は、「765プロダクション」に所属する駆け出しのアイドルたちを描いた青春群像劇である。物語は、大きく二つのパートに分けられている。すなわち、アイドルたち全体の姿を描くエピソード群と、一人ひとりにスポットライトを当てるようなエピソードに。この構造は、作品に通底するひとつのテーマを示している。それは「全体」と「個」の葛藤、あるいは前者から後者への移行と言うべきものである。そして、そのテーマを最も引き受けているのが主人公のプロデューサーである。 第一話、主人公はカメラマンからプロデューサーへと転身する