人気の旅行先「台湾」の過去と現在が交錯する芥川賞作家高山羽根子さん渾身の近刊『パレードのシステム』。新聞・雑誌、書評で数多く取り上げられ注目されています。そんな中から気鋭の評論家佐藤康智さんが「群像」4月号に寄せた書評を転載して紹介します。 狂おしい想像力に何よりも度肝を抜かれる 美術家である「私」は、故郷の母から、母方の祖父の訃報を受ける。死因が自死だったこともあり、葬式は人を呼ばず、母と叔母(母の異母妹)のみで済ませるとのことだったが、「私」は久々に東京から帰郷し、半ば無理を言うかたちで葬式後の祖父宅に顔を出す。遺品整理をきっかけに、祖父が日本統治時代の台湾生まれであったことを知る。けれど、祖父の若い頃を詳しく知る親族はいなかった。 古い写真や、判読できない文字の記された絵ハガキなど、祖父の過去を探る糸口となりそうな遺品を譲り受けた「私」は、それらを元バイト仲間で台湾出身の梅さんに見て