世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は1960年代から、共産主義に対峙(たいじ)する政治団体「国際勝共連合」を通じて、日本の保守勢力に接近してきた。その裏で、共産主義の最たる北朝鮮にも取り入り、ついには合弁の自動車工場まで設立していた。北朝鮮は念願の国産車第1号を内外にアピールしたが、結局は工場が開店休業状態に陥り、軍事転用に利用されたという情報もある。旧統一教会の巨額投資がもたらした功罪を、ライターの金正太郎氏がリポートする。 ◇ 「民族が力を合わせて世界へ」 首都・平壌(ピョンヤン)直轄市につながる高速道路沿いには、北朝鮮の国産車「口笛」の大型看板が設置されている。 旧統一教会の創立者、文鮮明(ムン・ソンミョン)氏は91年に訪朝して、金日成(キム・イルソン)主席と接見して以降、北朝鮮に急接近する。 北朝鮮は南浦(ナンポ)に広大な工場用地を提供し、旧統一教会側が7割、北朝鮮側が3割を出資し