この着想を得るにあたって、クラーク大学の国際政治学者、シンシア・エンロー氏の著作との出会い は大きかった。彼女は、社会が軍事化というプロセスを辿っていくには、女性の分断という「策略」が不可欠であること、分断の障壁によって、女性たちが互いを知らず、関わらず、時に敵対的であることで、軍事化はスムーズに進行し得るのだと主張していたのだ。 もし、そうであるなら、なおさらのこと、「軍隊と女性」の問題を考えるにあたって、「軍隊の女性」を見つめることは不可欠なことのように思われた。軍隊に対する女性の関係を、「被害者としての女性」という一枚岩のものとして見るのではなく、自衛隊が女性たちに何かを与えつつ、彼女たちから何かを得ていくその仕組みを正確に見つめるべきだと思うようになった。 自分の背丈の2倍以上はあろうかという大型車を運転する女性自衛官は充実した職業につくことのできた喜びを噛みしめていた。何十人とい