人気作「坂本ですが?」「ミギとダリ」をのこし急逝した漫画家の佐野菜見さん。周囲を圧倒する熱意で愛する漫画と向き合い、読む者の日常を穏やかな笑いで彩った。 初めての連載漫画にして代表作「坂本ですが?」(KADOKAWA、全4巻)は、何をさせてもクールかつスタイリッシュに決めてしまう男子高校生が主人公だ。 スーパーの試食コーナーを巡る様が優雅すぎてまるで立食パーティーだとうわさされ、ゲームセンターではワニたたきゲームでバッハの旋律を奏で、店主をうっとりさせる。 絵のタッチは硬質。登場人物の大まじめな振る舞いのなかに、思わずクスッとする笑いをちりばめる。 「なんでやねん」というツッコミはあえて作中に織り込まず、笑いの解釈は読者に委ねる独自のスタイルが広く支持された。 新人漫画家を積極的に起用する漫画誌「フェローズ」(現ハルタ)で連載が始まったのは2012年だった。翌年に単行本化、16年にアニメ化