小さな襟の付いたブラウスと足首にまで届くふわりとしたスカートを着て静かに佇むその人は、凜として背が高く、少し猫背で、黒目勝ちな瞳を持っていた。 私は一枚のポスターを思い出し、胸を高鳴らせていた。海中からウニを手に現れ、水しぶきとともに髪を靡かせて口を大きな半円に開けた絣(かすり)の袢纏(はんてん)をはおった少女のでっかい笑顔。 それと同じ顔が、目の前にある。私は思わず、心の中でこう呟いた。ドラマで彼女の母親役を演じた小泉今日子さんの声に似せて。 お帰りなさい、アキ。 頭の中では午前8時ちょうどに鳴り響いたビッグバンドが演奏するドラマのオープニング曲が聴こえていた。スカ調の軽快な音楽を聴けば見える。黄色いTシャツに白いシャツとジーンズ姿で、紅いリボンの制服姿で、北の海女と書かれた鉢巻きと海女姿で、大きくジャンプするアキが跳ねては消えるあのシーンが。 2016年12月。私の前に現れたNHKの連
本来ならマラソン大会翌日ですので、自分が走ったレポートを書くところですが、わたしの気持ちの昂りはとても自分のレポートを書ける状態にありません。 わたしが目にした光景を文章にしないと、眠りにつくことすらできそうにありません。 事の発端は、わたしが千葉マリンマラソンのゴール風景の写真を撮り終えて、別の取材のために都内に向かおうと陸橋を上がっていたときでした。 ゴール前で最終ランナーを見送ったつもりだったのに、まだ選手が続々と歩道を走ってくるのが見えます。そういえば道路封鎖時間を過ぎたら、歩道を走ることになるということを思い出しました。 ところが、歩道を走っていたランナーの前には、走り終えたランナーたちが、ドリンクや参加賞をもらっているエリアがあります。 わたしは一瞬「あぁリタイアなのね」と思ったのですが、どうも様子がおかしいように感じます。ランナーたちは、向かいからやってくるゴールしたランナー
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