昨年秋に京都で発表した『バルパライソの長い坂をくだる話』が、ぼくにとって4作目の「岸田國士戯曲賞」の最終候補作になったが、前回候補になったとき(2016)の審査会でぼくのテキストについて、「これを戯曲と呼べるのか」というような議論が、その選評を読むかぎりどうもあったらしい。ぼくはいつも戯曲──というか演劇のためのテキストを書いているつもりなのでそう言われても困るのだが、そして審査員たちがこれを読むかはしらないが、今回の審査会のまえに、ぼくなりに戯曲を書くということについて思うところを書いておくことにする。 ところで岸田戯曲賞では、上演に使用されたものはすべて「上演台本」と呼ぶようである。岸田戯曲賞にはこちらから「台本」を応募するわけではなく、12月くらいになると白水社から連絡が来て、データなり印刷したものなりを送る。そうして集まったものの中から最終候補作が選ばれることになる。 前回候補にな