日本のみならず、世界の三つ星店にもオンリストされている日本酒「醸し人九平次」。世界的評価を受ける背景にあるのは、人の目が届く規模で徹底管理したミニマルな醸造と、米から自社で手がけるドメーヌ化という、従来の概念を打ち破る日本酒造りにあった。 すべては大量生産へのアンチテーゼから始まった これまでの日本酒の概念を一変させる男がいる。名古屋の造り酒屋「萬乗醸造」の15代目蔵元・久野九平治だ。20代の頃は演劇の世界に身を置き、30歳手前で父親が病に倒れ、家業の継承を決意。「やるからには徹底的に、日本酒業界を変える」と誓った。 日本酒の消費量は1973年をピークに減少へ転じ、現在は50年前の3分の1にも満たない。久野氏が家業を継いだ90年代半ばはまだ100万キロリットルを維持していたが、21世紀に入ると、とうとうその数字を割る。日本酒業界はジリ貧の状況にあった。 「消費は落ち込んでいるのに日本酒業界