今月完成したマップを広げながら、芭蕉の旅立ちに思いをはせる櫟原さん。奥に見えるのが千住大橋(東京都足立区で) 旅の起点は隅田川の北岸か、南岸か――。俳人・松尾芭蕉(1644~94年)が「奥の細道」の旅を始めた地を巡り、東京都足立、荒川両区が四半世紀もの間、論争を続けている。 その場所は隅田川にかかる千住大橋周辺とされるが、橋のどちら側かはわかっておらず、北岸の足立区と南岸の荒川区は共に「芭蕉旅立ちの地」を譲らない。地元の芭蕉ファンからは、「論争に終止符を」と融和策を模索する動きも出始めている。 ◆発端 論争の発端は1989年5月。旅の出発から300周年の記念事業で行われた、足立区と、芭蕉の住居があった江東区による旅立ちの再現イベントだった。 「奥の細道」で、芭蕉は出発点を「千住といふ所」と書いている。現在の千住大橋付近で船を下り、北へ向かったとされ、「行く春や鳥啼(な)き魚(うお)の目は泪