狩野直喜「経史子概要」(『漢文研究法』、みすず書房、1979年、所収)は、経書の簡潔な解説ですが、『詩経』の解釈における、毛伝と朱子集伝との違いを述べています。その例として、王風の「丘中有麻」の詩を挙げているので、ここに引用します(p.112)。 王風「丘中有麻」に、 「丘中有麻、彼留子嗟、彼留子嗟、將其來施施」云々 朱傳に、 「婦人望其所與私者而不來、故疑丘中有麻之處復有與之私而留之者」云々 と解せり。古義によれば、 「丘中有麻、思賢也、莊王不明、賢人放逐、國人思之而作是詩也」云々 曹劉と通ず。漢書地理志、水經注などにあり。 問題は末尾の「曹劉と通ず」であり、校訂者は「原稿にかく見えるが、文意は通じない」と注記しています(同書、p.113)。 確かにこれでは意味が通じません。著者の意図は「留、劉と通ず」であったと、わたくしは推測します。「曹」は「留」の誤りでしょう。 「彼留子嗟」という詩
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