<日曜カルチャー> 魏志倭人伝に登場する「伊都国(いとこく)」のシンポジウム「伊都国人と文字」が先月、福岡県糸島市で開かれた。伊都国の中枢遺跡、三雲・井原(いわら)遺跡(同市)をはじめ、北部九州で近年発見が相次いだ硯(すずり)を巡って、当時の人々と文字の関係を探った。中国との外交交渉を続けてきた北部九州の先進性と、文字普及の可能性のある範囲の広がりだけでなく、沿岸部の集落間であった日常交易での使用の可能性も指摘された。【大森顕浩】 弥生時代の硯はこれまで、田和山遺跡(松江市)▽三雲・井原遺跡▽中原遺跡(福岡県筑前町)▽薬師ノ上遺跡(同)--で出土。古墳時代となる3世紀後半では比恵遺跡群(福岡市博多区)で確認された。いずれも古代中国・前漢が設置した出先機関「楽浪郡」のあった朝鮮半島北西部で出土した硯が原形とみられる。最初に出土した田和山遺跡(2001年)の硯は権力者の威信財とされたが、2例目