安倍首相が華々しい外交を展開している。ニューヨークで次期米国大統領のドナルド・トランプ氏と会談し、トランプ氏が最初に会った海外首脳となった。その足でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に出席するためペルーを訪問し、ロシアのプーチン大統領をはじめ各国首脳との会談も次々とこなした。さらにアルゼンチンも訪問した。12月にはプーチン大統領が来日する。日中韓三カ国首脳会議も予定されている。 しかし、その一方で第二次安倍内閣の発足以後、時間と労力をかけて作り上げてきた重要な外交的成果が次々と崩壊し始めていることは、あまり語られていない。 具体的にはTPP(環太平洋経済連携協定)合意、従軍慰安婦問題に関する日韓合意、そして、南シナ海への中国の進出に関する仲裁裁判所の判決の三つだ。これらの政策はいずれも台頭著しい中国への対抗策という側面を持っているだけに、安倍首相は対中戦略の立て直しを迫られることになるだ