夏目房之介『マンガ学への挑戦』 この本は、表題が示すように、漫画学の課題がどこにあるのか、という問題を、作者→作品→読者という大づかみな流れにそって、その概略的な見取り図を提示したものである。この大雑把な流れの中に著作権、制作システム、市場の問題などが入ってくる。 しかし、そのなかでも軸になっている問題はやはり「進化する批評地図」という副題にもあるように、漫画批評の問題である。 夏目は、この本の中で、戦後の漫画批評の方法の変遷をたどりながら、自分の批評方法、すなわち「漫画表現論」ともいうべき方法がどのように先行の批評の批判として確立してきたかをのべる。 夏目の総括は次のようなものである。 戦後、漫画批評は「教育論的漫画論」から出発する。すなわち、漫画が子どもたちや教育にあたえる「悪影響」について論じられ、またそれにたいする反論として論じられた。 1960年代に入り、鶴見俊輔や石子順造などを