矢口高雄『9で割れ!!』 矢口高雄『9で割れ!』は、高度成長期、矢口が漫画家になる前の銀行員時代のことを描いた自伝的漫画である。 銀行がシャッターを閉めてから出納と伝票の結果をあわせて一致していれば仕事終了のメドがたつが、一致していないと「出納事故」となり、勘定間違いや集計ミスをさがして一致するまで繰り返される。 そのとき、まず最初にやる作業が「9で割る」ことなのだ。一番犯しやすいミスは桁を間違えて記入することである。たとえば1万5千円を15万円と記入すると、13万5千円の不足が生じるが、その不足額を9でわると13万5千円÷9=1万5000円とたちどころに元の記入ミスをしている数字が発覚するのである。これがタイトルの「9で割れ」の由来である。 最近まで信金に勤めていた女性に聞いたのだが、今でもやるそうである。 1円でもミスが許されず、そのために膨大なエネルギーを消尽するという銀行の世界を象