終身雇用、年功序列が実質的に存在し続ける現状は、本質的に「競争が嫌い」という日本人の特質に根ざしていることを前回書いた。私自身、「毎日が競争」である実力主義の外資系企業での“しんどさ”に嫌気がさして日本企業に転職した経験があるが、日本人のそうした特質を生かした雇用を戦略的に行い、「競争力」として生かしている企業を紹介しよう。 そもそも日本人の「競争嫌い」は昨日や今日始まったものではない。7世紀に成立した日本最初の成文法といわれる十七条憲法。その第一条は「和を以て貴しとなす」だ。何よりもまずは“和”だったのである。飛鳥時代から日本人は、争うことを忌避してきたのだ。 その後、15世紀に応仁の乱で初めて下剋上が起こり、続く戦国時代は実力主義の争いの時代となるが、それは長い日本の歴史の中では例外的で、最終的には17世紀に天下統一を成し遂げた徳川支配による平和が300年間続いた。徳川幕府は士農工商と