「市場の鮨屋」。そう聞くだけで、いやが上にも期待は高まる。魚を扱うプロの職場にある市場内の鮨店だ。まずかろうはずがない。万が一があれば、気性の荒い場内のプロから詰められたりもするかもしれない。「うちの魚に何してくれとんねん!」と。 そう、ここは大阪中央卸売市場。昭和6年に開場した大阪の台所だ。その場内に、現在の市場よりも遥かに歴史ある鮨店がある。明治40年、当時の魚市場である「雑喉場(ざこば)」で創業し、現在は中央卸売市場にのれんを提げる「ゑんどう」である。 ちなみに「雑喉場」とは15世紀末に起源を持つ、大阪の魚市場のこと。江戸時代には堂島の米市、天満の野菜市と並び、「上方三市」と呼ばれた由緒正しい庶民のための市場だった。 「にぎりずし」ではない「つかみずし」 今年創業111年目となる「ゑんどう」の鮨は面白い。ここの鮨はにぎりであってにぎりではない。呼称は「つかみずし」。通常のにぎりは「本