▼「競馬は人生の縮図」とした米国の作家ヘミングウェーは、インタビューを受けた記者に君は競馬は?と尋ねて、ハイの返事にこう言ったという。「レーシング・フォーム(競馬新聞)、ほんとの小説技術ってのは、あれさ」 ▼出走するサラブレッドのことが書いてある。これまでの成績の詳細、収入、両親の名前、出身地、性格、脚質、調教師の話…。小さな囲みにぎっしり詰まった情報がレースの推理を楽しくする ▼「人生は競馬の比喩」とした劇作家で歌人で詩人の寺山修司は「レーシング・フォームの人間版があってもよいのではないか」と書いている(自著「馬敗れて草原あり」角川文庫) ▼例えば大きなテーマの討論会で、参加者の立場や発言録、収入、それに「その人の今日をつくった思想の『調教師』、討論における『脚質』(いつも興奮する、とか)」などが分かっていれば「論議の流れの全体的把握が可能になる」 ▼時代を超えた空想討論にヘミングウェー