小泉進次郎氏がモデルにしているのは、明らかに父親である。本書は飯島元秘書官の「秘録」というよりざっくばらんな思い出話だが、印象的なのは小泉純一郎氏が「一匹狼」だという意識が強く、まさか首相になるとは思っていなかったことだ。「自民党をぶっ壊す」というのも元は「田中派をぶっ壊す」という意味だったが、力関係には圧倒的な差があった。 よくも悪くも思い込みが強く、戦略がない。政局の勘は鋭いが政策には関心がなく、細かいことはみんな側近にまかせる。小泉政権の経済政策は、ほとんど竹中平蔵氏が立案したものだが、経済諮問会議では必ず彼の隣にすわり、「竹中のいう通りだ」とトップダウンで指示した。 財政超タカ派の「新自由主義」 郵政民営化も、小泉氏が大蔵政務次官だった1970年代からの信念だった。特殊法人が赤字を垂れ流し、それを財政投融資でプールして一般会計で補填するという形で、財投が田中派の私物化する「裏の国家