『ハムレット、東北に立つ:東北弁シェイクスピア劇団の冒険』(下館和巳/国書刊行会) 「すっか、すねがだ、なじょすっぺ」 「なんでっしゃ、なんで門太なのっしゃ」 いきなりそう聞いても多くの人は「?」となってしまうだろう。しかし、実はいずれもウィリアム・シェイクスピアの書いた舞台劇の台詞である(前者は『ハムレット』、後者は『ロミオとジュリエット』)。ただし、いずれも東北弁に翻訳されているのだ。 仙台を拠点にして東北弁でシェイクスピアの舞台を上演するという、奇抜なコンセプトで注目を集める「シェイクスピア・カンパニー」、本書は主宰者自らが劇団の生い立ちを綴った一冊だ。演劇と聞くと高尚なイメージを抱いてしまう人もいるだろうが、本書は文化とは誰のために存在するのかを考えるきっかけになるだろう。 世界最大の劇作家と呼ばれるウィリアム・シェイクスピア、彼の残した作品は500年以上も世界中で上演され続けてい