『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』(早川書房) 2014年11月、世界中がエクアドルで行われていたアドベンチャーレースに注目していた。熾烈を極めるレースの行方は確かに魅力的だったが、その大会に限れば主役は優勝チームではなかった。スウェーデンのチーム「ピークパフォーマンス」に一匹の犬が途中から加わったのである。「アーサー」と名付けられたその野犬は、傷だらけの体でチームと共にレースを完走したのだった。 あまりにもドラマティックなアーサーの物語を、チームのリーダー、ミカエル・リンドノードが一冊の本に綴った。『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』(早川書房)は人間と犬の間に芽生えた奇跡的な出会いが感動を呼ぶノンフィクションである。 アドベンチャーレースとは、過酷な大自然の中で行われる競争である。コースは何百キロにも及び、最低限の食事や睡眠をとりながら、世界中から集まった4人1組