「相棒」シリーズの脚本で知られる太田愛さんが、作家としても注目を浴びるようになったのは4年ほど前。通り魔事件に隠された社会を揺るがす陰謀を描いた『犯罪者 クリミナル』で鮮烈なデビューを果たした。続く第2作『幻夏』では、司法や警察によって人生を狂わされた者の慟哭を描き、日本推理作家協会賞候補に。新刊『天上の葦』は、前2作でも活躍した興信所所長の鑓水七雄と所員・繁藤修司、刑事の相馬亮介の3人が、日常と社会を一変させる犯罪に挑むクライムサスペンス巨編だ。 実社会で起きている異変。今書かないと手遅れになる 構想の発端について太田さんはこう語る。 「このところ急に世の中の空気が変わってきましたよね。特にメディアの世界では、政権政党から公平中立報道の要望書が出されたり、選挙前の政党に関する街頭インタビューがなくなったり。総務大臣がテレビ局に対して、電波停止を命じる可能性があると言及したこともありました