あえて乱暴に、簡単に言ってしまおう。本作『おやすみ、リリー』(ハーパーコリンズ ジャパン)は、「病気になった最愛の犬を亡くす」という話だ。 ペットを飼っている方なら、それだけでもう胸がグッと締め付けられるのではないだろうか。かくいう私も4歳のチワワを飼っており「もしこの子が死んだら……」という、まだ現実的ではない想像をしただけでも涙が出てきてしまうほど。 本書の翻訳者越前敏弥氏も、こう述べている。 小説の翻訳の仕事をはじめて二十年近くになるが、訳出作業の途中で涙がこぼれたことは二回しかない。一回目は、エラリー・クイーンによる名探偵ドルリー・レーン四部作の最終作『レーン最後の事件』のラストを訳していたとき。そして二回目は、この『おやすみ、リリー』だ。 愛犬がいなくなる。 これはもう絶対に悲しいことで、そんなものを小説にされたらそりゃ泣くわ、というわけで……。私は「泣く準備」をしながら本書を捲