『銀河鉄道の父』(門井慶喜/講談社) 親というものは自らの子を甘やかさずにはいられないものなのか。たとえ親の威厳を保とうと平静を装うとも、子の一挙手一投足に心揺り動かされてしまうものなのか。第158回直木賞受賞作・門井慶喜氏著『銀河鉄道の父』(講談社)は、『銀河鉄道の夜』『雨ニモマケズ』などの著作で知られる文豪・宮沢賢治の父親の姿を描き出した作品。 現代人からすると、宮沢賢治には聖人君子のようなイメージがつきまとうが、親から見れば、彼は決して出来の良い息子ではなかった。しかし、どんな「ダメ息子」であろうと、親は子を愛さずにはいられない。息子に振り回されながらも無償の愛を注ぎ続ける父親と、その愛情に甘えながらも、父親を超えたいと葛藤する息子。不器用な親子の姿を描き出した傑作小説である。 宮沢賢治は、明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた。生家は祖父の代から富裕な質屋。賢治の父・政次郎