『二千七百の夏と冬』(双葉文庫) 北関東のダム建設予定地で、縄文人の古人骨が発見された。推定される年齢は10代半ば、性別は男性。新聞記者の佐藤香椰は、この発見を連載企画にできないか検討を始め、発掘を進める地元の国立大学准教授・松野から情報を集めていく。やがて、古人骨は約2700年前のもので、その左手には米の稲らしきものが握られていたことが判明。さらに、縄文人の古人骨のすぐ隣に同じく10代半ばの女性と推定される渡来系弥生人の古人骨も発見された。縄文人の右手は弥生人の左手にしっかりと重ねられ、2体は互いに向き合った姿で寄り添うように横たわっていた。この男女に何があったのか。ふたりは縄文と弥生の間をつなぐミッシングリンクなのか? 第5回山田風太郎賞を受賞した荻原浩の『二千七百の夏と冬』。主人公は、この古人骨として発見された縄文人、15歳の少年ウルクだ。ピナイと呼ばれる村の集落で狩猟採集をする部族