坂野潤治先生の新著『階級の日本近代史』からは、戦争や占領がなかったとしても、自前のデモクラシーによって、社会民主主義に到達していたはずだという、熱い想いが伝わってくる。日本近代史の碩学が、階級という経済問題を中心に据え、改めて読み解いた一冊に、いろいろと思い巡らすことが多かった。 ……… 筆者は経済でものを眺めるので、戦前、最も平和主義的、自由主義的だった浜口・若槻の民政党政権が、金解禁に伴う緊縮を断行し、国民に塗炭の苦しみを与え、政党への信用を失墜させたために、日本は道を踏み外したと考えている。経済は、高橋是清が「リフレ」で回復させたのだが、国民には、満州事変の戦争景気で救われたように映り、経済政策の失敗が悲劇的な権力移行に結びついてしまった。 本コラムは、アベノミクスに対して辛口だが、今年10月に予定されていた消費再増税を延期したことは、大いに評価している。8%の消費税ですら、前回の景